閉ざしていた部屋を
叩かれたような気がして
覗き穴から様子をうかがうように
片目の扉だけを細く開ける
その朝 最初の訪問者は
東方からのレイザー 一筋の光線

わずかな隙間を押し開き
角膜を抜け網膜に達し 
視神経の通りを駆け抜けて行く
近づいてくるスパーク 絡み合う腕
わたしへのメッセージが届けられる朝

    火の残りをたしかめる風が吹き 
    ならされた灰が舞いはじめていた

硝煙のなか 揺り動かされ 
目覚めへの抵抗にゆっくりと頭を振る 
髪の毛先に頬を打たれ わたしはあやされる
機嫌をとられ 頬を擦りながら 
昨夜のわたしをさがす 残された生身の匂いが
ふたたびまどろみを呼ぶなかで
 Awake (めざめ)     堀田のぞみ
    まどろみが部屋の扉を押す 閉じられるまぶた 
    光線はいくつにも枝別れし 浮遊が繰り返される

頬を持たせかけていた肩から見下ろす丘の風景
一心に降り注ぐ 強い幾筋ものレイザーの集束 
丘を焼こうと 打ち寄せるその光の波に
わたしは扉を盾にして レイザーを増幅させる

    太陽の端が流入する臙脂色の沼
    その沼のなかで扉を焼いていた

やがて扉は焼け落ちた 
まぶたを透過する白いレイザー
わたしは弓なりに体を反らせ伸び上がり
扉を失った部屋からこぼれて移動してゆく

肌の上を撫でていった短いパルスの波
流れ込んだ波が引いて行く
洞窟の入り口の奥では
壁を震わせる長い野性の声
わたしは体を伸ばしながら
両手の網を放ち その声をたぐりよせる
同人紹介に戻る      第17回詩と思想新人賞本選考対象作品(第1次選考通過)