日々の泡   ついきひろこ

こちらの岸から
島の墓地へと
低くかけ渡された板は
ひつぎをかつぐ男たちの 足の下でたわみ
男たちが進むにつれて
たわみも大きくなり
中ほどでは
ぴたぴたと 水を打つ

ぼんやりとにごった水面に
ぴたぴたと
小さな波が立ち
水面に広がってゆく

そのゆらぎの中で
はっきりしない白のかたまりが
浅く水面に浮かび上がる

不安定な板の上で
かがみこんだ彼の 目には
開ききらない睡蓮の花が一つ
うすくにごった水をすかして
見える(はずだ)

   *ボリス・ヴィアン「日々の泡」による
戻る